ホーム空き家管理ガイド > 空き家の屋根から雪が落ちて他人に被害が出たら

「実家の屋根に雪が積もっているのは分かっているけれど、遠方で雪下ろしに行けない」「もし隣の家や通行人、駐車中の車に雪が落ちて壊してしまったら」――誰も住んでいない空き家だからこそ、被害が起きても気づくのが遅れ、対応も後手に回りがちです。

結論から言うと、空き家の屋根からの落雪で他人に損害を与えた場合、所有者は民法717条により、過失の有無にかかわらず賠償責任を負う可能性があります。この記事では、責任の考え方、税負担への影響、今から遠方でもできる対策までまとめます。

本記事は法律・条例に関する一般的な考え方を整理したものであり、法的判断を示すものではありません。個別の状況については弁護士など専門家にご相談ください。

まず結論

  1. 空き家の屋根からの落雪で他人に損害を与えた場合、所有者は民法717条により、過失がなくても賠償責任を負う可能性があります(無過失責任)。
  2. 積雪を認識しながら除雪などの対策をとらなかった場合、「工作物の保存に瑕疵があった」と判断された裁判例があります。
  3. 管理状態が著しく悪いと「特定空き家」「管理不全空家」に指定され、固定資産税の優遇が外れて税負担が増えることもあります。現実的な対策は、屋根の雪下ろし・落雪防止の措置を行う、または遠方でも代行を依頼することです。

今の状況は、どのくらいリスクがある?

同じ「屋根に雪が積もっている」状態でも、リスクの大きさは状況によって変わります。

状況リスクの目安対応の目安
屋根に雪が積もっているが、隣接する建物・通路・駐車スペースまで距離がある低〜中様子を見つつ、積雪状況の記録を残しておく
隣家や道路、駐車車両に近接した屋根に雪が積もっている中〜高早めに雪下ろし・雪止め設置を検討する
積雪を認識しているのに、何シーズンも除雪や対策をしていない高(瑕疵と判断されやすい)速やかに対策を。自分で難しければ業者に相談
実際に隣家・通行人・車などへ被害が出てしまった賠償責任が現実化しうる保険の確認とあわせて、専門家への相談を検討

「まだ何も起きていないから大丈夫」ではなく、隣接する建物や通路との距離、積雪量、これまで対策をしてきたかで判断するのが実務上の考え方です。当社にも「まだ何も起きていないが、この先が心配」という遠方所有者からのご相談が多く寄せられます。

民法717条とは?空き家の所有者が負う「無過失責任」

民法717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)は、建物などの工作物の設置・保存に「瑕疵(欠陥・不備)」があり、それによって他人に損害を与えたときは、まず占有者が、占有者が損害の防止に必要な注意をしていたことを証明できれば所有者が、損害を賠償しなければならないと定めています。

  • 占有者(実際にその建物を使っている人)は、相当の注意をしていたことを証明できれば責任を免れられます(過失責任に近い扱い)。
  • 所有者は、占有者が免責される場合に責任を負い、過失の有無にかかわらず賠償責任を負う「無過失責任」とされています。

空き家は誰も住んでおらず「占有者」が実質的に不在のため、所有者が直接この責任の矢面に立ちやすいという点が、人が住んでいる家との大きな違いです。

実際に責任が認められた裁判例

屋根からの落雪をめぐっては、雪止め設備の不備や、除雪を怠ったまま危険な状態を放置していたことが「工作物の保存の瑕疵」にあたるとして、占有者・所有者の責任が認められた裁判例があります。一方で、隣地建物に対して屋根の改築や融雪設備の維持管理までを求めた請求が退けられた例もあり、どこまでの対策を怠っていたかによって判断が分かれます。個別の裁判例の詳細(裁判所名・判決年月日等)は本記事では特定せず、一般的な考え方として整理しています。

「何cm積もったら必ず責任を問われる」という一律の基準があるわけではありません。ただし、危険性を認識しながら雪止めの設置や除雪などの対策を何もしなかったという点が、責任が認められた事例で共通して重視されています。

プロに任せたほうがよい目安

✅ 次のうち当てはまる項目はありますか

  • 隣接する建物・通路・駐車スペースまでの距離が近い
  • 積雪を数シーズン放置し、雪止め設備も特にない
  • 自分で屋根に上がって除雪する体力・技術に不安がある
  • すでに近隣から一言、心配や指摘の声をもらっている

▶ 1つでも当てはまる → 早めに業者へ相談したほうが確実です

▶ 1つも当てはまらない → 当面は経過観察で問題ない可能性が高いですが、積雪の増減は定期的に確認しておくと安心です

📷 屋根の積雪・落雪対策のご相談も承っています

遠方で現地の状況が分からない場合も、状況をお伺いしながらご案内します。ご相談・お見積りに費用はかかりません。

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費用は誰が負担する?賠償と、除雪・修理そのものの費用

「費用」には大きく2つの意味があります。

  • 他人への損害を賠償する費用:民法717条により、所有者(または占有者)が負担します。保険で補償されることもありますが、加入状況・契約内容によって異なります(詳しくは次項)。
  • そもそも雪下ろし・落雪防止の対策にかかる費用:これは所有者が事前に負担するもので、賠償責任が発生する前の「予防」にあたります。遠方で自分では対応できない場合、代行を依頼する費用として考えておくと、賠償リスクを未然に減らせます。業者に依頼する場合の金額は建物の状況によって変わるため、正式な費用は見積り時にご案内します。

屋根の雪下ろし自体の危険性や、業者に任せるべき判断基準は屋根の雪下ろしはなぜ危険?消防庁データで見る死亡事故の実態と業者に任せるべき判断基準で詳しく解説しています。

保険はどこまで補償される?確認しておきたいポイント

落雪で他人に損害を与えた場合の賠償は、加入している保険の種類によって補償の有無・範囲が変わります。

  • 個人賠償責任保険(特約):日常生活の中で他人にケガをさせたり、物を壊したりした場合の賠償をカバーする保険です。火災保険や自動車保険、傷害保険などに特約として付帯されていることが多く、単体でも加入できます。空き家の管理不備による事故が対象になるかは契約内容によります。
  • 施設賠償責任保険:建物の所有・管理に伴って他人に損害を与えた場合の賠償を対象とする保険です。個人向けの契約は少なく、主に事業者・法人向けですが、空き家の管理リスクをカバーする商品として案内されることもあります。
  • 火災保険:建物自体の損害(自分の屋根の破損等)は火災保険の対象になり得ますが、他人への賠償はカバーしないのが一般的です。賠償部分は上記の個人賠償責任特約等で別途備える必要があります。

保険会社へ確認しておきたいポイント

  • 加入している保険に個人賠償責任(特約)が付いているか
  • 空き家(居住していない建物)の管理不備による事故が補償対象に含まれるか
  • 保険が使えないケース(重大な過失・故意、免責事項に該当する場合など)はどのような条件か

保険の適用可否は契約内容によって個別に判断されるため、詳細は加入している保険会社・代理店に直接確認することをおすすめします。

放置するとどうなる?「特定空き家」「管理不全空家」と固定資産税

管理状態が著しく悪い空き家は、空家等対策特別措置法により市区町村から「特定空家等」、または今後そうなるおそれがある「管理不全空家等」に指定されることがあります。市区町村の助言・指導 → 勧告 → 命令のうち「勧告」を受けると、住宅用地の固定資産税の軽減特例が外れます。

区分特例適用時勧告後(特例解除)
小規模住宅用地(200㎡以下の部分)課税標準1/6特例なし=最大で約6倍になり得る
一般住宅用地(200㎡を超える部分)課税標準1/3特例なし=最大で約3倍になり得る

出典:東京都主税局「特定空家等・管理不全空家等に該当する場合の固定資産税・都市計画税」国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」関連資料

さらに「命令」にも従わない場合は50万円以下の過料の対象にもなり得ます。落雪の危険を放置することは、賠償リスクだけでなく、こうした行政上の指定・税負担にもつながる可能性があります。「特定空き家に指定されないか心配」という相談も、珍しくありません。

今すぐできる対策

  • 屋根の雪下ろし:積雪が一定量を超える前に下ろしておくのが最も直接的な対策です。高所作業は危険を伴うため、無理な自己対応は避けたほうが安全です。
  • 落雪防止柵・雪止め金具の設置:屋根の構造によっては後付けできる場合があります。
  • 危険な範囲への注意表示:隣接する通路や駐車スペースがある場合、「落雪注意」の掲示だけでも、万が一のときの状況説明に役立つことがあります。
  • 定期的な現地確認:現地に行けない期間が長い場合、代行での見回り・写真報告を利用する方法もあります。

雪止め設備の有無や屋根の形状は建物ごとに異なるため、「うちの屋根に何が必要か」を写真で確認したいというご相談も珍しくありません。実際に、遠方で相続した実家の屋根に雪が積もっていることに気づきながら数シーズン放置し、ある年、隣家のカーポートに落雪して破損させてしまったというご相談もいただきます。以降は業者に依頼して雪止めを設置し、毎年冬前に見回りと除雪をお願いするようになった、というケースも見られます(複数のご相談内容をもとに構成した一例です)。

積雪した屋根を確認するイメージ
※イメージ(積雪した屋根を確認する様子)

やってはいけないこと(NG行動)

  • 「今まで何も起きていないから大丈夫」で放置する:これまで被害がなかったことは、今後の責任を否定する理由にはなりません。
  • 近隣から指摘を受けても対応を先延ばしにする:指摘を受けた時点で危険性を認識したとみなされ、その後の放置はより重く評価されかねません。
  • 危険性を認識しながら何の記録も残さない:対策をした・確認したという記録(写真等)がないと、後から説明することが難しくなります。
落雪注意の掲示イメージ
※イメージ(落雪注意の掲示)

実際に被害が出てしまったら?初動の流れ

すでに落雪で他人に被害が出てしまった場合は、次の順番で対応すると落ち着いて進めやすくなります。

  1. ケガ人がいないか確認する:人的被害がある場合は、応急対応・救急要請を最優先してください。
  2. 状況を写真で記録する:被害箇所・積雪の状態をご自身の敷地や安全な場所から撮影しておくと、後の説明や保険手続きに役立ちます。
  3. さらなる落雪・二次被害を防ぐ:可能であれば危険な範囲に近づかないよう注意喚起し、追加の落雪が起きないか様子を見ます。
  4. 加入している保険会社に連絡する:個人賠償責任保険等に加入している場合は、早めに連絡し、対応方法を確認します。
  5. 業者に相談する:再発防止(雪止め設置・除雪等)の対応を業者に相談します。

近隣への伝え方(文例テンプレート)

すでに近隣から指摘を受けている場合、まずは状況を把握していることを伝え、対応の見通しを共有すると角が立ちにくくなります。

電話・対面で伝える場合の一例
「ご連絡ありがとうございます。屋根の雪については把握しております。現地に行くのが難しいため、業者に相談して対応を進めます。ご心配をおかけしており申し訳ございません。」

手紙・書面で伝える場合の一例
「日頃よりお世話になっております。実家(空き家)の屋根の積雪についてご心配をおかけしており、現在対応を検討しております。何かお気づきの点がございましたら、下記までご連絡ください。」

撮影して状況を確認する場合は、ご自身の敷地や公道など、安全な場所から行うようにしてください。

よくある質問(FAQ)

屋根の雪が落ちて隣の車が壊れました。必ず賠償しなければなりませんか?
民法717条により、所有者は過失がなくても賠償責任を負う可能性があります。ただし、実際に責任が認められるかどうかは、瑕疵の有無や状況によって個別に判断されます。個別の事案については弁護士にご相談ください。
警察に相談できますか?
すでに物損・けが等の被害が発生している場合や緊急性が高い場合は警察への相談が選択肢になりますが、まだ被害が出ていない「心配」の段階では、通常は所有者自身の対応や自治体の空き家相談窓口への相談が基本になります。
個人賠償責任保険に入っていれば安心ですか?
加入している保険の種類・契約内容によって、落雪による損害賠償が補償対象に含まれるかどうかは異なります。保険証券や契約内容の確認をおすすめします。
雪下ろしをする人がいない場合、どうすればいいですか?
遠方で自分では対応できない場合、代行業者に依頼する方法があります。現地に行けなくても、写真での状況報告を受けながら進めることができます。
「特定空き家」に指定されるとどうなりますか?
市区町村からの助言・指導、勧告、命令という段階を経て、勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税が上がります。命令にも従わない場合は過料の対象になることもあります。
賃貸に貸している場合、責任は誰にありますか?
建物を実際に使用している入居者(占有者)がまず責任の対象になりますが、入居者が損害防止に必要な注意をしていたことを証明できる場合は、所有者が責任を負う構造になっています。契約内容によっても扱いが異なるため、管理会社等への確認をおすすめします。
雪止め金具をつければ、責任を問われることはなくなりますか?
対策を講じていたことは、瑕疵の有無を判断するうえでプラスに評価される要素にはなり得ますが、それだけで責任が一切問われなくなると言い切ることはできません。状況に応じた対策と記録を残しておくことが大切です。
隣の空き家の雪が心配です。どこに相談すればいいですか?
まずは所有者に直接、または自治体の空き家相談窓口に相談する方法があります。危険が差し迫っている場合は、自治体や必要に応じて警察への相談も選択肢になります。
屋根の雪下ろしは自分でやってもいいですか?
高所からの転落や雪の下敷きになる事故のリスクがあるため、無理をせず業者に任せることを検討したほうが安全な場合があります。詳しくは屋根の雪下ろしはなぜ危険?消防庁データで見る死亡事故の実態と業者に任せるべき判断基準をご覧ください。
空き家の前が子どもの通学路になっています。何か対策できますか?
「落雪注意」の掲示や、早めの雪下ろし・雪止め設置で、通行への影響を減らす対策ができます。危険性が高いと感じる場合は、通学路を管理する学校・自治体へ情報共有しておくことも一つの方法です。
屋根から雪が落ちて電線を破損した場合はどうすればいいですか?
電線・電柱等のインフラ設備が破損した場合は、まず電力会社・通信会社など設備を管理する事業者へ連絡してください。個人での応急対応は感電等の危険があるため避け、専門の事業者に任せる必要があります。あわせて保険会社にも状況を連絡しておくと安心です。

まとめ:気づいているなら、対策と記録を残しておく

  • 空き家の屋根からの落雪で他人に損害を与えた場合、所有者は民法717条により、過失がなくても賠償責任を負う可能性があります
  • 積雪を認識しながら対策をしないことは、「工作物の保存の瑕疵」と判断される要素になり得ます。
  • 管理状態が悪いと「特定空き家」「管理不全空家」に指定され、固定資産税の負担が増えることもあります。
  • 遠方で対応できない場合は、無理をせず代行を利用し、対策をした事実を写真等で残しておくことが、賠償リスクを減らす現実的な一歩です。

運営:生活サポート24(空き家の水抜き・凍結防止のほか、草刈り・伐採・庭じまいなど幅広く対応)

対応が遅れるほど、賠償リスクや特定空き家指定・税負担のリスクは大きくなります。対応が必要か分からない、というご相談も珍しくありません。こんな方にご相談いただいています。
  • ✓ 実家の屋根に雪が積もっているが、現地に行けない
  • ✓ 隣家・道路との距離が近く、落雪が心配
  • ✓ 近隣からすでに一言、心配の声をもらっている
  • ✓ 何から手をつければいいか分からない

📷 空き家の屋根の積雪・落雪対策、まずはご相談ください

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