「隣の空き地が草ぼうぼうで、うちの庭まで雑草や枝が入ってくる」「虫が増える・日当たりが悪い・景観も悪い…でも勝手に刈っていいのか分からない」——所有者と顔が見えない相手だと、よけいに動きづらいですよね。

結論から言うと、越境してきた雑草を勝手に刈るのは、原則として避けるべきです。他人の土地の植物に手を出すと、かえってトラブルになりかねません。この記事では、なぜ勝手に刈れないのか、2023年の民法改正で変わった点、所有者が分からないときの調べ方、苦情の出し先と角が立たない伝え方までを、一般的な情報として整理します。

対処の流れはこの5ステップです
越境を発見 → 所有者を確認 → 所有者に依頼 → (動かなければ)自治体に相談 → (それでも解決しなければ)専門家へ

まず結論:勝手に刈らない。まず「誰に言うか」を押さえる

  • 越境した雑草を勝手に刈るのは原則NG。他人の所有物のため、トラブル(損害賠償など)の火種になり得ます。
  • 越境した「枝」は、2023年の民法改正で“条件つき”で自分で切れるようになりました。「根」は以前から自分で切れます。ただし草(雑草)は枝の規定とは別で、自力での処理は慎重に。
  • 動く順番は①所有者を確認 → ②所有者に依頼 → ③自治体に相談(空き家なら空き家担当)。所有者不明なら登記簿で調べる/自治体に相談
  • 逆に自分の土地が荒れて隣から苦情を言われた(言われそう)なら、早めの草刈りが最善。こじれる前に手を打つのが安く済みます。
この記事は一般的な情報の整理です。実際にどこまで許されるかは状況により異なります。個別の判断は、お住まいの自治体や弁護士・司法書士にご確認ください。

なぜ勝手に刈ってはいけないのか|枝・根・草で扱いが違う

隣地から越境してきた植物でも、それは隣の土地の所有者のものです。無断で刈り取ると、状況によっては器物損壊や不法行為と受け取られ、損害賠償を求められることもあり得ます。ただし「枝」「根」「草」で扱いが違うため、整理しておきましょう。

越境してきたもの自分で切ってよいか(原則)
木の根自分で切り取ってよい(民法で認められている)
木の枝原則は所有者に切ってもらう。ただし2023年の民法改正で、下記①〜③のいずれかなら自分で切除できる
草(雑草)枝の規定とは別扱い。自力処理はトラブルになりやすく慎重に。まず所有者・自治体へ

2023年4月の民法改正:越境した「枝」を自分で切れる3つの場合

  • ① 所有者に切るよう催告したのに、相当な期間内に切らない
  • ② 所有者(や所在)を知ることができない
  • 急迫の事情がある

※越境した枝・根の扱いは民法233条(e-Gov法令検索)に基づく一般的な整理です。2023年4月1日施行の改正で枝の規定が変わりました(改正の経緯:法務省・相隣関係規定等の見直しに関する部会資料)。雑草の扱いは枝と異なり、明確な自力救済の規定がないため、勝手な処理はおすすめしません。実際の可否は個別事情により異なります。

隣の敷地から境界を越えて伸びてきた雑草
境界を越えて雑草が伸びてくるケース(※イメージ)

越境した雑草の草刈り費用は、誰が負担する?

「所有者に切ってもらう」のが原則ですが、実際には所有者本人が高齢・遠方・体調不良で動けないケースも少なくありません。この場合の費用負担の考え方を整理しておきます。

  • 原則は所有者負担:雑草は所有者の財産の一部なので、管理・処分の費用も本来は所有者が負うべきものです。
  • 所有者が対応できない場合:所有者本人の依頼・了承のもとで業者に頼めば、費用は所有者負担のまま進められます。
  • 緊急性が高く、被害側が一時的に立て替えるケース:虫やヘビの発生など、待てない事情がある場合に被害側が先に業者へ依頼し、後日所有者に費用を請求(または折半で合意)するケースもあります。ただし、これは当事者間の合意が前提で、法律上一律に決まっているわけではありません。
費用負担で話がまとまらないときこそ、第三者(業者)が間に入る形が効果的です。双方の状況を踏まえた現実的な分担案を提案できます。

正しい対処の順番|①所有者 → ②自治体 → ③専門家

  1. 所有者を確認する:隣地の持ち主が分かるなら、その人に状況を伝えます(後述の「調べ方」も参照)。
  2. 所有者に刈り取り・管理を依頼する:まずは穏やかに「越境して困っている」と伝え、対応をお願いします。記録のため書面・メールが残る形だと安心です。
  3. 自治体に相談する:所有者が動かない/連絡がつかないときは、市区町村の環境課・環境衛生課などへ。空き家なら空き家対策の担当課が窓口です。
  4. 空き家は「空家等対策の推進に関する特別措置法」も:管理されていない空き家は、市区町村が所有者に指導・勧告などを行える場合があります(勧告を受けると土地の固定資産税の住宅用地特例が外れることも)。
  5. 解決しなければ専門家へ:それでも改善しないときは、弁護士・司法書士に相談を。自治会・町内会を通すと角が立ちにくい場合もあります。

持ち主が分からないとき|所有者の調べ方

「空き地・空き家の持ち主が誰か分からない」というのが、近隣トラブルでいちばん多い手詰まりです。次の方法で確認できることがあります。

  • 登記簿(登記事項証明書)で確認:その土地・建物の登記は、法務局で誰でも取得できます。所有者の氏名・住所が記載されています(古い情報のままのこともあります)。
  • 自治体に相談:固定資産税の関係で自治体は所有者を把握していることがあり、空き家担当課が間に入って所有者へ連絡してくれるケースもあります(個人情報のため教えてもらえないことも)。
  • 相続で持ち主が変わっている場合:2024年4月から相続登記が義務化され、所有者不明土地を減らす方向に制度が動いています。登記が古いときは相続人をたどる必要があり、ここは司法書士が得意です。
所有者の調査・連絡は手間がかかります。「自分で全部やるのは大変」というときは、まず自治体に相談するのが、いちばん負担が少なく確実な入口です。
隣地の境界の塀を越えて茂った雑草
手入れされないまま境界を越えて茂った雑草(※イメージ)

角が立たない伝え方|ご近所だからこそ慎重に

相手が近所に住んでいる場合、伝え方しだいで関係が悪化します。次のポイントを押さえましょう。

  • 感情的にならず、事実と困りごとを具体的に(「雑草でうちの庭に虫が増えて困っている」など)。
  • 「刈ってほしい」と一方的に要求せず、相談ベースで。相手にも事情(高齢・遠方・体調)があることが多いです。
  • 直接言いにくいときは、自治会・町内会や自治体を通すと、個人対個人の対立になりにくいです。
  • 記録を残す:いつ・どう伝えたかをメモ。書面やメールだと後々の相談時に役立ちます。

第三者が間に入るという選択肢|「どちらが払うか」「何をするか」で揉めそうなとき

越境トラブルでとくにこじれやすいのは、「費用はどちらが持つのか」「どこまで刈るのか」という2点です。当事者同士のやり取りだと感情的になりやすく、話が進まなくなることも少なくありません。

現場では、業者が間に入り、どちらか一方の味方をするのではなく中立な立場で双方の状況を聞いたうえで、費用の分担や作業範囲の落とし所を提案することで、直接のやり取りを避けながらうまくまとまったケースもあります。ご近所同士だからこそ、あいだに人が入ることで「言った・言わない」のやり取りを減らせるという側面があります。

もちろん最終的な合意は当事者間の話し合い次第で、必ずまとまるとは限りません。まとまらない場合は前述のとおり、自治体や弁護士・司法書士への相談も検討してください。

逆に「うちの土地が荒れて苦情を言われた」ときは?

立場が逆のケース——自分の所有する空き地・実家・相続した土地が草で荒れて、隣から苦情を言われた(言われそう)——も少なくありません。この場合の最善は、こじれる前に早めに草を刈ることです。

当社(生活サポート24)へのご相談でも、実は「隣の土地が越境している」よりも「自分の空き地・実家に隣から苦情が来た(来そう)」というご相談の方が多い傾向があります。よくあるパターンは、実家を相続したものの県外に住んでいて現地に行けず、気づかないうちに雑草が伸びていたというケースです。隣家からの連絡で初めて状況を知り、驚いて相談に来られる方も少なくありません。悪気があって放置しているわけではなく、早めに草を刈ってしまえばそれだけでトラブルが解消することがほとんどです。
  • 苦情が来てから放置すると、関係が悪化し、自治体からの指導につながることもあります。
  • 遠方で自分では行けない・高齢で作業できない場合は、草刈りの代行に頼むのが現実的です。写真とLINEで相談でき、当日の立会いも不要です。
放置リスク(管理義務・条例・行政代執行など)については 空き地・農地の管理義務と放置リスク で詳しく解説しています。遠方の土地は 実家・空き家を遠方から依頼 もあわせてご覧ください。

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よくある質問(FAQ)

隣の空き地から越境してきた雑草を、勝手に刈ってもいいですか?
原則として避けてください。越境した草でも隣地の所有者のもので、無断で刈ると器物損壊や不法行為と受け取られトラブルになり得ます。まず所有者に伝えて対応を求め、難しければ自治体に相談するのが安全です。
越境してきた木の枝は自分で切れますか?
原則は所有者に切ってもらいますが、2023年4月の民法改正で、催告しても相当期間内に切らない・所有者や所在が分からない・急迫の事情がある、のいずれかなら自分で切除できるようになりました。根は以前から自分で切り取れます。
隣の土地の持ち主が分かりません。どう調べますか?
法務局で登記事項証明書を取得すると所有者の氏名・住所が分かります(情報が古いこともあります)。自治体が間に入ってくれる場合もあります。相続で持ち主が変わっているときは相続人をたどる必要があり、司法書士に相談すると確実です。
苦情はどこに言えばいいですか?
まず所有者へ。連絡がつかない・動かないときは、市区町村の環境課や空き家対策の担当課に相談してください。空き家は空家対策特別措置法に基づき、市区町村が所有者に指導・勧告を行える場合があります。
自分の空き地が荒れて隣から苦情が来ました。どうすればいいですか?
こじれる前に早めに草を刈るのが最善です。放置すると関係が悪化し、自治体の指導につながることもあります。遠方や高齢で作業が難しい場合は、写真で相談できる草刈り代行に頼むのが現実的です。
所有者に頼んでも刈ってくれません。どうすればいいですか?
記録を残したうえで自治体に相談しましょう。空き家なら担当課が指導してくれることがあります。それでも改善しない場合は、弁護士・司法書士への相談を検討してください。自治会を通すと角が立ちにくいこともあります。
近所の人に直接言うと角が立ちそうで不安です。
感情的にならず事実と困りごとを具体的に伝え、相談ベースで切り出すのがコツです。直接が難しければ自治会・町内会や自治体を通すと、個人同士の対立になりにくくなります。
これは法律的に問題ない対応ですか?
この記事は一般的な情報の整理です。実際にどこまで許されるかは個別の事情で変わります。確実な判断は、お住まいの自治体や弁護士・司法書士にご確認ください。
隣の空き地の雑草で虫やヘビが出るようになりました。どうすればいいですか?
草が伸びると虫やヘビの隠れ場所になりやすく、実際にそうしたご相談も多くあります。健康・安全に関わることなので、所有者への連絡と並行して、自治体(環境課など)にも早めに相談することをおすすめします。ご自身の敷地内の対策(近づかない・侵入経路を塞ぐ等)も合わせて検討してください。

まとめ:勝手に刈らず「順番」で動く。自分の土地は早めに刈る

  • 越境した雑草を勝手に刈るのは原則NG。枝は民法改正で条件つき可・根は可・草は慎重に。
  • 動く順番は①所有者確認 → ②依頼 → ③自治体 →(空き家なら空き家担当)→ 専門家。所有者不明は登記簿・自治体
  • 伝え方は感情的にならず・相談ベース・自治会や自治体経由で角を立てない。
  • 逆に自分の土地が荒れて苦情を言われたら、早めの草刈りが最善。遠方・高齢なら代行を。
くり返しになりますが、個別の法的な判断は自治体・弁護士・司法書士へ。この記事は一般的な情報の整理です。

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